大切な方を亡くした後の悲しみに対する向き合い方や立ち直り方は人それぞれ異なります。大切な方を亡くして深い悲しみにいる方に対し、どう向き合って良いのか・自分にも立ち直る為の手助けができないものかなど悩んでいる方もいらしゃるのではないでしょうか。死別を経験した方に寄り添う方法のひとつに「グリーフケア」という物があります。
今回の記事では、グリーフケアについて詳しくご紹介致します。
心のプロセス
グリーフケアについて具体的にお伝えする前に、心の移り変わりについて理解することでより状況に応じたサポートができますので、大切な方を亡くした方の心の移り変わりについてお伝えしていきます。
ここから遺族の方がたどる心のプロセスの四つの段階をご紹介しますが、あくまでもお伝えする事は一般的なものですから、人の心の変化はその方の性格だけでなく年齢や生い立ち・文化や宗教的によっても違うということも理解しておく必要があります。
遺族の方がたどる一般的な心の過程は『ショック期』『喪失期』『閉じこもり期』『癒し・再生期』の四つの段階に分けられます。これらの喪失の想い・立ち直りの想いがそれぞれ天秤でのせたような心の動きをし、尚且つその動きは一日の中でも上下し、回復していくにしたがって週単位や月単位といったように鎮静化していくのが一般的とされています。『ショック期』の心の特徴は「何も考えられない状態」になることや「故人の死を受け入れられない」否認という反応が出るような状態に加え、亡くなった方を思い起こしては「愛おしい・恋しい」「もう一度会いたい」という気持ちが生じるのが特徴です。『喪失期』には「あの時こうしていたら」等という罪悪感や力になれなかった自分自身への自責の気持ちが生まれる反面、自分を残していった故人への怒り・絶望などの気持ちも沸き起こる場合もあり、自身と他人とが違ってしまったような感覚を覚え、やがて疎外感を感じるようになってしまいます。閉じこもり期では、何事にも対し無気力になってしまい生活のリズムが乱れたりなどの症状が見受けられ俗に言う「うつ的な症状」が出る場合があります。亡くなった方の声が聞こえたり、姿が見える・傍にいる感覚がするなどの幻覚症状が出る場合もある時期となります。こうしたいくつかの心の変化の中で故人の死を受け入れ悲しみを乗り越えようと自分を奮い立たせようとする段階が『癒し・再生期』です。ここまでお伝えたした心の移り変わりの段階は、順番どおりに進行する訳ではなく天秤にのせたような心の動きをしますから、人によっては各段階を行き来する場合もあります。
深い悲しみは心に影響を与えるだけでは留まらず体や健康状態にも影響するのです。心のプロセスを辿っていくと何も考えられない・感じないという感情の麻痺や怒りの気持ち、さらに孤独感や不安感、罪悪感や無力感などの感情を抱くことにもなるでしょう。こうした心の反応は体や健康状態にも影響を及ぼし、睡眠障害・食欲不振・疲労感・めまい・肩こり・動悸・自律神経失調症・免疫力の低下といったような症状が出る場合があります。こうした状況は深刻な状態ではありますが、あくまでも正常な反応とされていますから、グリーフケアを通じ大切な方を亡くし悲しみに暮れている方にやさしく寄り添い、サポートすることが出来ると良いでしょう。
グリーフケアについて
グリーフケアのグリーグは英語で『Grief』と書き、死別などによる「苦悩」「悲嘆」「深い悲しみ」を意味する単語となり、ケアは英語で『Care』と書き「心づかい」「世話する」を意味する単語です。大切な方の死別に遭遇すると、人は大きなショックや深い悲しみに襲われます。多くの場合は心についた傷は時間が立てば癒えていきますが、独りで抱え込んだり乗り越えようとすると一層多くの時間を費やしたり乗り越えることが困難な場合があります。グリーフケアとは、大切な方を亡くし悲しみに暮れている方にやさしく寄り添い、サポートするということです。愛する方の死を経験すると、人は悲しみだけでなく喪失感・孤独感、自責の念など様々な感情をもつようになります。そうした心の変化は、睡眠障害や食欲低下などの身体的な不調につながることもあり、こうした状態を乗り越えることが困難になってしまうと病的な状態に陥ってしまい社会に出る事も困難になってしまう場合もあります。そうした最悪の状況を防ぐ為にサポートするのがグリーフケアです。
グリーフケアの歴史は深く、日本では1970年代に必要性が認識されるようになり徐々に広まってきました。そうした背景には核家族化が進んだという点や、医療の進歩によって自宅ではなく病院などで最期の時を迎えるケースが増えた点にあります。つまり、以前は大家族や地域交流の中で自然と心の傷が癒されていたりしたのが、核家族化が進み悲しみを周りの方と共有できない・一人で乗り越えなければいけないという状況になってしまっていたり、家で家族の死を看取る経験が少なくなったということから「死の受け止め方が分からない・どう支えたら良いのかがわからない」という方が増えているのです。
費用や注意点
大切な方との死別を経験したことで深い悲しみを感じている方の気持ちに寄り添い、フォローをするのがグリーフケアの目的です。悲しみを乗り越え、立ち直るまでにはいくつかの段階を経なければなりません。その段階を「グリーフワーク」といい、立ち直るまでの段階とは先にお伝えした心のプロセスである『ショック期』『喪失期』『閉じこもり期』『癒し・再生期』です。人の死は予期せぬものですから、心の準備や整理は事前に出来るものではないですし、また不慮の事故などといったような理由で大切な方を失った場合は特にグリーフワークが完了するまでに長い期間が必要な場合もあります。状況によっては専門家のサポートが必要なときもあるでしょう。グリーフワークを経験している方を見守り支えるのがグリーフケアです。ここからはグリーフケアのやり方と、注意点についてお伝えします。
グリーフケアの第一歩は、相手の悲しみを肯定することです。中には感情を表に出すことが苦手であったり、気丈にふるまおうと悲しみの感情を抑えようとする方もいらっしゃるかと思います。しかし、死を悲しむという気持ちは自然な感情であるということを伝え、その感情を肯定するのが最初の段階です。次に、悲しい気持を表現してもらい自分自身で抱え込まないようにしてもらうようにします。例えば、故人の思い出を話してもらったり、故人への気持ちを文章にしてもらうなどの方法があるでしょう。葬儀などの儀式に参加し故人の死を受け入れてもらうのも、悲しみと向き合うための方法のひとつといえるでしょう。ただし、どの方法であっても悲しみの中にいる方に無理にして貰うのではなく、あくまでも本人の意思や感情を尊重し見守るように支えることが大切なことです。グリーフケアを行っていても、グリーフワークを進めるのが難しい場合にはグリーフケアの専門家に相談をするというのも一つの手段です。
グリーフケアの注意点として、安易に相手を励ます言葉を掛けないようにする事が大切です。早く悲しみの中から脱してほしい・元気になってほしいなど相手のことを想うが故につい励ましてしまう気持ちはわかりますが、悲しみの感情をおさえつけてしまい独りで抱え込んでしまう原因となりかねませんから、プレッシャーになるような言葉を使うことは避けましょう。無理やり死を受け入れさせるような言葉は、逆効果となる場合があります。また、相手の気持ちを分かったふりをしたり同情したりすることにも注意しましょう。この様なことは決して悪い事ではないのですが、経験と考え方によっても感じ方は異なってきます。ですから場合によっては相手に不信感を抱かせてしまいますので注意が必要です。
専門機関でグリーフケアを受けなければならないという義務はありませんが、支えが必要と感じている際には本人や周りの方の為にもケアを受けるという選択肢を視野に入れてもよいでしょう。