お葬式の豆知識

意味葬具は、葬儀で使われる道具のことです。お葬式の多くは宗教行事となっている為、宗教に由来する道具が多い特徴があります。仏式では仏教の、神式では古事などに基づいた装具を使用しており、一つ一つに意味があります。
今回の記事では、葬具について詳しくご紹介致します。

葬具とは

ろうそく日本で行われるお葬式は約9割が仏式と言われています。多くの場合、仏教の思想に基づいて古来から使われてきた道具を現在の事情や儀式に合わせた形に変えて使用しています。その際に使われる道具と言う意味合いで野辺具とも呼ばれていました。江戸時代から昭和初期くらいまでは野辺の送りが行われていました。その際に使われる道具と言う意味合いで野辺具と呼ばれていました。野辺送りとは葬送のことで近親者たちが列をなして火葬場・墓地へ故人を見送る儀式のことです。野辺の送りは地域によって隊列が異なるという特徴があり、一般的な葬列では列の先頭に松明や行灯が掲げられ、松明の明かりによって魔を祓っています。清められた道を行灯、6本のろうそくを持った六道が続き、故人の名前などを記した銘旗、亡くなった方の魂を守る龍頭、仏教の教えを書いた四旗、小銭を入れた花籠などが列をなします。そして、切れ目を入れた白い紙を棒に巻き付けた四華花(しかばな)や香炉(こうろ)・膳・位牌(いはい)・天蓋(てんがい)・棺などの順で続きます。葬列での役割は故人との間柄で決まり位牌は喪主、供えた飯碗は喪主の妻が手にしていたとされています。しかし、葬列の規模によって故人の社会的な地位などが示されるということから、葬列を組むために人を雇うなど時代と共に葬列は派手になっていったようで、遺族の経済的な負担は大きなものとなりました。また、都市部では市電や車などが発達するようになると、長い行列で練り歩くことが交通の妨げになるなどの理由で、野辺送りは徐々に廃れていきます。それに合わせこれまで使われていた野辺具は現代ではお通夜やお葬式で「葬具」として使われています。

仏具が変化した葬具について

位牌まず始めに仏具が変化した葬具についてお伝え致します。

位牌(いはい)
仏具が変化した葬具では位牌が代表的です。位牌は故人の魂を宿した仏具で、以前は野位牌として葬列の際に喪主によって火葬場・墓地などへ運ばれていました。近年では霊柩車の普及によって葬儀会場の祭壇や葬儀後の自宅に祀る程度にとどまっています。忌引明けまでの期間にのみ使用される為、多くの場合、位牌には簡易な素材である白木が用いられそれを仮位牌と読んでいます。
香炉(こうろ)
香炉とはお香を焚くための入れ物のことです。三具足や五具足のひとつで仏壇を飾る基本の仏具とされています。葬列を行っていたときも参列者が香炉を持っていました。現在では、葬儀会場の祭壇や火葬場で用いられています。

野道具が変化した葬具について

花ここからは、野道具が変化した葬具についてご紹介致します。

松明(たいまつ)
仏式のお葬式では導師が引導を渡す際に松明を使用します。進む道を清める意味や火葬の際に故人に引導を渡すために使われていました。近年では安全面への考慮から実際に火をつけた松明を使うことはなく、多くは松明に見立てた葬具を使用したり、い草や葦などを束ねたものを祭壇前の机に設置したりします。また、松明に込められる意味も亡くなった方に引導を渡すことに限られました。葬儀の際に投げたり手に持って回したりして死者を浄土へと導きます。
四本幡(しほんはた)
四本幡とは、四本の旗に「涅槃経」に記された四句を書いた紙を吊るしたものです。棺のまわりに配置したり埋葬する墓の四隅に立てたりして魔を祓っていました。涅槃経とは、釈迦が入滅するその日に最期の説法を問答形式で記した仏教の思想を伝える経典で、句には「諸行無常」「是正滅法」「消滅滅巳」「寂滅為楽」の四句があり、意味は以下の通りです。
〇諸行無常(しょぎょうむじょう)…すべての物は常に流転し変化が絶えないこと
〇是正滅法(ぜせいめっぽう)………あらゆるものは常に不変ではなく正滅する
〇消滅滅巳(しょうめつめつい)……生死の移り変わりが止むこと
〇寂滅為楽(じゃくめついらく)……煩悩を滅した悟りの境地に真の安楽がある
以上の四句は釈迦の入滅の際に記されたことから魔除けの効果があると考えられており、棺や墓の四隅に置くことで邪悪なものから遺体を守ることができると考えられていました。自宅でお葬式をする場合は門前に飾りますが、葬儀場で行う場合は棺の上や祭壇の端に飾ります。
四華花(しかばな)
四華花は刻みを入れた白い紙を棒や竹串に巻き付けてつくられたものを4本使用します。白い紙以外にも銀・金の紙が用いられることがあります。紙を使うことから、紙花花とも書きます。らせん状に巻きつけられた紙が四方に広がる様子がまるで花のように見えることや、四本立てないと死者が成仏できないと考えられていたことから四華花と呼ばれるようになりました。かつては、親族などが葬列の際に手に持つものとされ墓地の四隅に立てていましたが近年では地方の一部を除けばほとんど見ることはありません。現在では、祭壇や経机のまわりに立てられ、飾られる装具として使われるのが一般的な用途となっています。お葬式のあとに火葬場へ移動することを野辺送りに見立てて、遺骨や遺影と共に親族が四華花を手に持って移動することもあるようです。

今回の記事では葬儀に使われる葬具についてご紹介致しました。葬具は現代の様式に合わせ、 野道具や仏具が姿や用途が変わったものです。葬列を必要としなくなった現代の葬儀でも、必要な道具は変わりませんが、耐久性や見栄えなどの関係でプラスチックやアルミなどの素材のものも選択できるようになっています。また、現代で使用されている葬具の種類も地域によって違いがあります。