神道を信仰している方にはなじみが深い神棚。この神棚を封じる場合があることをご存知でしょうか。神棚を封じることを「神棚封じ」と呼び喪中期間に行われます。ご存知の方もそうでない方も改めて確認してみるといざという時に役立つかもしれません。
今回の記事では、喪中期間の神棚について詳しくご紹介致します。
神棚封じについて
神道の世界では「死」を穢れとして捉えられてきました。神棚封じには、家族の中けがれから神様の力を守るという意味が込められています。神棚封じは神様を封印することを指しますが、神道の世界では死や出産を穢れと捉えられていて、古来では亡くなった方には喪屋を作ったり、出産の際には産屋を作って隔てるようにしていました。この「穢れ」を不浄や汚れと連想する方もいらっしゃるかと思いますが、気力や気持ちなどの内面的な気が枯れてやる気のない状態を気枯れ(けがれ)ている、つまり「穢れている」と呼ぶようになったという背景があります。つらい出来事や悲しい出来事が起きると、人は気力が失われ元気な状態ではいられません。ご家族などの大切な方が亡くなった際には特に気持ちが沈み、悲しみであふれるでしょう。そういった状態を「穢れ」といい、不浄や汚れといった意味合いではないのです。自宅にある神棚はその家を守る小さな神社と同じ存在ですから、神様に死や遺族の方の穢れが及ぶことを避けるために守ることが大切だとされています。
神棚封じの時期については、故人が家へと帰り、枕飾りなどをした後や葬儀の後に行うのが一般的です。神道の考えでは「上座は北である」とされていますから、北枕にして故人を寝かせるようにし、枕飾りは八足机や三方(水・洗米・塩・お神酒)、花瓶、故人の好物などを供える必要があります。枕飾りなどの一連の流れは基本的に業者が行ってくれますので親族側で準備をする必要がない場合が多いですが、故人が使用していた布団などが必要な場合もあります。その際は業者から申し伝えがあるので確認しておくと良いでしょう。
神棚封じを行う人物としては、故人と関係が深いご家族は死と密接に関わっているため相応しくないと昔から考えられてきました。また、悲しみや辛さが残って気が動転していることも考えられますので、第三者の方へお願いした方が得策と言えるでしょう。ですから神棚封じをお願いする方はご家族以外の親類や友人などが理想的と言えますが、枕飾りを行った葬儀業者に事前に確認を取ってお願いしても良いでしょう。また、近年では、葬儀自体が簡略化されている傾向にある為、神棚封じを行う作法やマナーもそこまで厳密なものではなくなってきたのが実状です。万が一、神棚封じをお願いできる方がいらっしゃらない場合にはご家族の方が執り行っても差し支えはありません。
神棚封じの作法
神棚へ毎日欠かさずに礼拝や掃除を行なっているといつも通りに行った方が良いのか迷う方もいらっしゃるかと思いますが、神棚封じを行っている期間は神様を穢れから守り五十日の封印を解くまではそっとしておくように掃除や礼拝を控えることが大切です。万が一誤って神棚封じを解いてしまった場合には、自身を塩で浄めた後に再度半紙を貼り付けると良いとされています。お札はしめ縄と同様に年末年始に交換するものですが、喪中の期間はお札の交換はしなくても問題ありません。通常ですと、年末に古いお札を神社で納めるか、年始に初詣で神社の納札箱に入れることが可能ですが、喪中と重なった場合には喪中明けに神社へ直接お札を納め、新しいお札に交換するようにしましょう。お札を交換するタイミングは、年末年始と考えている方も多くいらっしゃるかと思いますが、本来は神棚のお札はつけ始めた時期である約一年後に交換すれば問題ないとされています。交換せずに何年も同じお札をつけ続けるのは失礼に値しますが年末年始に必ずしもお札を交換する必要はないということ念頭に置いておくと良いでしょう。
また、余談となりますが喪中に新年を迎える場合には、正月飾りは控えるようにしましょう。神道の習慣で門松や鏡餅・しめ縄を忌明けに飾っても問題はないと考えている方もいらっしゃいますが、基本的に飾らない方が無難です。正月飾りは新年を祝い、歳神様を迎え入れ、旧年を無事に過ごせたことへ感謝の意をあらわすものなので、旧年中に不幸があった場合は正月飾りを行うことは好ましくないとされています。
神棚封じの手順
ここからは神棚封じの具体的な手順についてお伝えしていきます。神棚封じを行う期間は五十日までと決められていました。神道は死そのものを避ける風習がありますので、例え神道以外の方が亡くなった場合であっても、家に神棚をまつっているのであれば神棚封じを行った方が良いと言い伝えられてきました。以下の手順に沿って神棚封じは行われますが、葬儀終了後など、可能な限り早い時期から行うようにすると良いでしょう。
- 神棚の神様へ挨拶をする
- 榊やお供物などを下げる
- 神棚の扉を閉め、真ん中に白い半紙を貼る
以上の手順をより詳しくお伝えすると、まずは神棚の神様へ軽くお辞儀をし簡単な挨拶をします。挨拶を済ませたら、神様へ「誰が亡くなったか」を伝えます。神道の考えでは亡くなった方は神の世界へ行き、自分たちの家・家族を守ってくれると言い伝えられている為、神様が故人を神の世界へ案内できるように誰が亡くなったかを報告することが大切です。神様へ亡くなった方が誰なのかを報告した後は、神棚にある榊やお供物を下げます。神様に対して失礼なのではないかと迷うかもしれませんが、すべて下げてしまって問題ありません。神棚を封印している期間中は、お供物をする必要もありませんし、何もしないで神棚を封印しておくことが大切なのです。その理由について簡潔にお伝えすると、古来より穢れから神棚を遠ざけるために、五十日間を過ぎるまでは触ることすら控えた方が良いとされていたという背景からです。榊やお供物など一式を下げたら扉を閉め、扉の中央に白い半紙(書道で使う白い半紙をそのまま)を貼り封印をしてください。神棚という聖域を犯さないようにするために半紙を使います。神棚の大きさや幅によっては半紙が小さく感じる場合もありますが、半紙の大きさを気にするよりも神棚の中心に貼るという点を意識しましょう。この際に神様へ穴を開ける行為は失礼にあたりますので、画びょうやピンなどで穴があくようなものは使わないようにします。テープなどで半紙を貼るということを忘れないようにしてください。神棚にしめ縄がある場合には、縄の上から白い半紙を貼り付けて問題ありません。その際も画びょうやピンなどの穴があく物は使わずにテープで貼るようにしましょう。通年であれば、年末に神棚の掃除を行い新しいしめ縄と交換しているかと思いますが、喪中の期間に新年を迎える際は、喪が明けてからしめ縄の交換を行うことをおすすめ致します。しめ縄がお正月の期間でなければ手に入らない場合は、準備だけ済ませておき喪が明けてから取り換えると良いですね。
神棚封じを解く際には五十日祭を終えてから行うと良いとされています。神棚の正面に貼り付けた白い半紙を丁寧にはがし、神棚の扉を開けて元の状態へと戻します。この流れが神棚の封印を解くという儀式の流れとなります。神棚封じが終わり次第、以前と同じようにお供物を用意しておくと良いでしょう。神棚封じの解き方には厳密な決まりはありませんので、お願いする相手がいない場合はご家族の方が行っても問題はありません。