食事の席でタブーとされる「箸渡し」ですが、箸渡しは火葬後の収骨の際に行う儀式である事からタブーとされている事は知っていても、箸渡しについて詳しい内容や由来・意味までは知らない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回の記事では、箸渡しについて詳しくご紹介致します。
箸のマナーと箸渡し
食事の席でタブーとされる「箸渡し」ですが、箸渡しは骨上げの際に故人に対して行う箸の作法である為に食事中の箸渡し(箸同士で直接食べ物を渡す行為)はお骨上げを連想させるという点から、嫌い箸や忌み箸と言ったようなタブーとされています。食事中に食べ物を箸同士で分け合うのはマナー違反ですので絶対に行わないよう注意しましょう。また、箸渡しで使用する骨上げ箸は、縁起の悪い事には逆さの事で対応する「逆さ事」の考えが元になっているという説もあり、長さや素材の違う箸を使用し不揃いにするという事が揃っている箸は「逆さ」という考え方があり、食事の席では違い箸といったようにタブーとされていますので互い違いの箸を使用する事も食事の際には行わない様にしましょう。食事の際の箸のマナーについては約四十二種類程度あるとされています。その中でも先に述べた箸渡しや違い箸の他に、箸をご飯に突き刺して立てる立て箸なども葬儀で行われる箸の作法として縁起の悪い事には逆さの事で対応する「逆さ事」の考えから嫌い箸というタブーとされています。葬儀の際の箸の作法と食事の際の箸の作法は「逆さごと」という点から繋がっているという事です。
箸渡しの意味・由来
箸渡しとは、火葬後に故人のお骨を骨壺に納める骨上げの際に行う儀式のことを指します。箸渡しは言葉の通り箸を使いお骨を骨壺へ入れていく儀式なのですが、仏教では現世とあの世があるとされていてこの世とあの世の境には三途の川が流れており亡くなられた方は三途の河を渡って極楽浄土へと向かうとされている為、亡くなられた方が無事に三途の川を渡れるよう「橋渡し」が出来る様にと願い、生きているものが実際に三途の河に橋を渡す事は出来ないので代わりに同音である箸にその願いを込めたと考えられています。また、亡くなられた方をあの世へ送る為に遺族の方々が共同作業として箸渡しをする事によって、悲しみを分け合うという意味も込められているそうです。箸渡しの儀式は日本固有の儀式であり、かつての日本では箸で掴んだお骨を遺族に順番に渡していって骨壺へお骨を納めていたとも言われています。
箸渡しで使用する箸は「骨上げ箸」と呼ばれていて、基本的には長さと素材が違う箸を一組にして使用します。長さや素材の違う箸を使用する理由については諸説あるのですが、食事の際に使用する箸と同じ形式のものでは縁起が悪いといった理由や左右を揃える間もないほどの悲しみと驚きを抱えていることを表しているという説もあります。
箸渡しのマナー
先に箸渡しの意味や由来をご紹介致しましたが、ここでは現代での箸渡しの作法について詳しくご紹介致します。
箸渡しは原則として二人一組のペアで行います。その際に男女一組のペアになる事がマナーとされている場合もありますが、参列者の方々の男女比率が一定になるという訳ではありませんので男女一組でなければいけないというように拘る必要はありません。
箸渡しは、二人一組のペアになり遺骨台の反対側に居る方同士でひとつのお骨を同時に掴み骨壺に収めていくのですが、一人が摘み上げたお骨にもう一人の方が箸を添える様にして骨壺に収める場合と、二人同時にお骨を摘み上げて骨壺に収める場合があります。後者の場合で男女一組の際にはお骨の左側を男性が摘み、女性が右側を摘んで同時に摘み上げます。しかし、作法とは言え二人で一つのお骨を摘んで運ぶのは少々難しい作業となります。万が一途中でお骨を落としてしまっても慌てずに落ち着いて係の指示に従うようにしましょう。また、お伝えした作法については基本的な作法になりますので、地域や宗派によっては箸渡しのやり方に違いがあり中には二人一組ではなく一人で行う場合やお骨上げ全般の流れを職員に任せ箸渡しを行わない場合等もありますので、実際に箸渡しを行う際には地域や宗派の作法に従うようにして下さい。また箸渡しを行う順番は、血縁の濃い順からというのが原則になります。基本的には一組(もしくは一人)一回箸渡しを行いますが、参加者が少ない場合には一巡した後にまた血縁の濃い順に戻る場合などもあります。骨上げの順番については足側の骨から下から上へと順に納めていくようにします。